lost 25 うごめく真実

山本一郎は、生徒を送り出した後別室で仮眠をとっていた藤嶺正明を起こしに“1年3組”と書かれたプレ―トがドアの上に貼ってある、プログラム中の今は仮眠室として使用している部屋へと入ってきた。
もろい木造校舎に加え、4人分のベッドを置いたこの部屋はいつ床が抜けてもおかしくないと思ってしまうほど激しく軋んだ。その音を聞き、山本はそっと足を降ろして出来る限り無駄な雑音を減らそうとしていた。だが、そっと足を降ろしても普通に歩いても山本の体重は変わらないため、相変わらず足元からは耳障りな音が聞こえてくる。
藤嶺の寝ている一番奥のベッドに近づき、そっと声をかける。
「藤嶺教官、起きてください。あと1時間で1回目の定時放送なのでそろそろ準備をしないと……」
藤嶺はぴくりとも動かない。
藤嶺は寝起きが悪い。藤嶺から提示放送前に起こすように頼まれていた山本はその話を聞かされていたが、一声かければ目を覚ますまではいくだろうと予想していた。単に目覚めた後、ベッドから起き上がるまでに時間がかかるタイプだろうと思っていたのだ。
だが、藤嶺は目覚めない。
「藤嶺さん、起きてくださいよ」
ついには体をゆすり始める。声をかけて起きないタイプは体に刺激を与えないとなかなか起きないものだ。
「……ん? ああ、もう時間か?」
体をゆさぶられた藤嶺はようやく目を覚ました。寝起きでも自分が仕事中の身であることは忘れずにいるらしく、すぐさま仕事の話に入る。
「はい、あと1時間で定時放送です。そろそろ準備したほうがいいですよ。コンピュ―タ―で禁止エリアを算出させないといけないですし……」
「そうだな。ああ、そうだ、生き残りそうだったヤツとか、誰かが賭けてたヤツが死んだりしなかったか?」
プログラムでは毎回恒例となっているトトカルチョ。今回も20人あまりいる政府の役人たちであらかじめ生徒名簿と学校生活でのデ―タを見て、気に入った生徒、不良生徒など生き残りそうな生徒たちを選んで賭けをしていたのだ。
毎回、賭けていた生徒が序盤で死んでしまうなど政府の役人からすれば迷惑なアクシデントも起こり、トトカルチョに参加している藤嶺も生徒の死亡状況は気になっていた。
山本は、ポケットから小さな紙切れを取り出し、それを見ながら答える。
「ああ―……そうですね、現在残り41人、最初に桃井凛、プログラム開始してからは黒土青葉、加島強……この生徒は学校生活などを見る限りではかなり意外でしたね。
続いて山田葵、宇佐美桐人、間宮桜、地麻……以上が死んだ生徒です。現在時刻は5時17分ですが、ここ30分死亡者は確認されていません」
「そうか、加島がね……アイツは2人くらい賭けてたよな? これで俺の儲かる確率もあがったわけか。
で、まだアイツは死んでいないんだな? 怪我とか大丈夫だよな?」
賭けに勝つ確立があがり、顔がほころんでいた藤嶺だが、突如何かを思い出したように表情を変え、山本に質問してきた。
「は、あの子はまだ無事です。ゲ―ムに乗ったと噂になっているようですが……私は死亡生徒のデ―タ入力をしていたため定かではないです。ですが、あの子はゲ―ムに乗る確立は高いんですよね?」
「ああ、それはそうだよ。なにせアイツは――……っと、悪い、これは政府側の諸事情なんだった。じゃあ行くか?」
そう言うと、藤嶺は立ち上がり、髪を軽く整えると山本を連れて歩き出した。
2人分の体重を支える床からは悲鳴のような音が発せられる。その音を気に留めることもなく藤嶺は仮眠室から一番広い職員室――現在はコンピュ―タ―などが置いてある管理室へと足を踏み入れた。



残り41人





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